全員野球で月次決算に取り組む話 |#コーポレートDXの実践

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こんにちは、すべての経済活動をデジタル化したい、LayerXの木村(@akkyy_k)です。
経営管理と広報を担当しており、昨年からはじめた経理も早いもので一年が経ち、今月で13回目の月次決算を終えました。LayerXでは今、月初5営業日を目処に月次決算をしめることとしていますが、今月は特にオペレーションがスムーズに進んだので、何が良かったのか振り返ってみます。
要因はいくつかあるのですが、自社プロダクトである「LayerX ワークフロー」機能の導入とその運用が社内に定着してきたことが大きいなと感じています。
「自社プロダクトの宣伝かよ」と思われてしまいそうですが、とはいえ、ただツールを導入するだけではダメで、大事なことはその使い方です。月初の限られた時間の中で、如何に手戻りなく情報を集めるかが重要になってきますので、「LayerX ワークフロー」の導入とあわせて行った業務の見直しをご紹介したいと思います。
「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道(イチロー選手)」
一つ一つは小さな改善にすぎませんが、地道に取り組んで行ければと思っています。月次決算を早くしめることの価値は、様々ところで言われています。正確な業績情報を社内に早期にフィードバックできるだけでなく、自身の時間を他の業務に充てられるという意味合いもあります。一人ないし、少数で経営管理や経理を担当しているものの、事業の成長・拡大に伴い、情報収集の負荷が高くなってきたという方の参考になると嬉しいです。

ワークフローとは何か

本題に入る前に、ワークフローって何??という方のために、簡単に説明します。ワークフロー(システム)は、企業内での決め事について、申請・承認・決裁をおこなう一連のシステムをさします。電子稟議システムや電子承認システムとも呼ばれます。
例えば何かを購入する際に、勝手に買うということはなく、口頭やあるいはSlack、Teams、メールなどでやりとりして上長や役員決裁を得ていると思いますが、それを一つのサービス(システム)上で行うものが、ワークフローシステムです。
会社としての購入に限らず、個人として結婚して扶養情報がかわった、引っ越して住所が変更になった、など会社に対して申請するものも、ワークフローの一種といえます。
LayerXでは、現在18個の申請を使っています。
申請の内容に応じて、承認者、決裁者を定めます。こちらはLayerXでの支払申請の承認ルートです。
会社としてのガバナンスの向上や、内部統制強化を目的にワークフローシステムを導入されるケースもあるでしょうが、作業の効率化、迅速化、コーポレートDXの観点でもワークフローの導入は有効に思います。

月次決算におけるデータ収集の流れ

さて月次決算においては、大きく5種類のデータを全社から社員の協力を得て収集する必要があります。いろんな区分の仕方がありえると思いますが、今回は
①売上:どの企業に対して、いつ売上がたつのかの情報②支払(請求書):いつまでに誰にいくら支払う必要があるのかの情報と、その証憑としての請求書③支払(クレジットカード):支払った証憑としての領収書④支払(立替経費):いつ誰にいくら支払ったのかの情報と、その証憑としての領収書⑤給与:勤怠情報
の5つの区切りで話を進めていきます。この5種類の情報と証憑を収集する流れと活用しているサービスを図示すると、以下のようになります。
「LayerX ワークフロー」の導入で特に効率化できたのが、②支払(請求書)の部分です。LayerXでは当初、ほぼすべての請求書を経営管理部のメールアドレス宛に直接送られてくるようにしていました。ですが、SaaS事業の本格展開に伴い、業務委託費や広告費など、請求書枚数が少しずつ増えてきており、取引先などから直接請求書が送られてくると、その内容について、何の費用なのか、支払っていいものなのか、など各担当者にヒアリングするのにも時間がかかり、また、組織が大きくなるに連れてその担当者を特定する工数も増えてきていました。また、本来あるまじきことですが、見落としが発生したことも0ではありません。
こうしたタイミングで、「LayerX ワークフロー」がリリースされ、お客様に提案する以上は当然社内でも実際に活用してみようというドッグフーディング的にな意味合いもあり、社内でもワークフローを実際に導入しようということになりました。

業務の見直し –交通整理、フォーマットの標準化、データのアセット化–

#交通整理
ワークフローの導入にあたってはまず以下を行いました。
- CFOから週次定例で説明
その後は、「何かを購入したい」などのコミュニケーションがSlack上などであった際に、粘り強くワークフローの申請をお願いするということを継続的にやっていきます。この点は正直工夫はあまりないのですが、LayerXでは、Slackのコミュニケーションは極力透明性高く、オープンなチャンネルで行っていて、ワークフローの申請についても例外なく、他の社員が見えるところで依頼するようにしてやっています。
さてワークフローの導入に伴い、各部が請求書を一次請けとなり、支払申請を提出してもらう流れにしました。
これにより、自分の手元に請求書が届きいた時点で、必要な情報がワークフローの支払申請を見ればわかるようになり、仕訳の登録がすぐに始められます。「LayerX ワークフロー」上で、同じツールの中で請求書に紐づく契約書等をすぐに確認できるので、確認作業もスムーズです。
とはいえ、ワークフローの導入で、経理担当が楽になるとしても、社員にとっては、今まで必要のなかったオペレーションが増えることになります。本来的には事業に集中できる環境を整備するのが、コーポレート部門の役目の一つでもあるので、できる限り負担は増やしたくありません。このあたりは、自画自賛になってしまいますが、申請にあたっては請求書の情報をOCRで読み取り作成補助してくれるので手入力がほとんどないですし、あるいはSlack上で承認もできたりと、気の利いた機能が散りばめらており、ストレス無いに等しいです。
普段から事務作業が苦手あることを公言している面々も、競って申請、承認するという摩訶不思議な現象がおきています。とにかくサクサク使えて使い勝手がよいので、百聞は一見に如かず、ぜひ使ってみてください。
#フォーマットの標準化
ワークフローとは直接は関係ありませんが、HRチームが主導して、業務委託の方に提出してもらう請求書も雛形をつくり、notionで事前に共有するようにしてくれました。
業務委託の方は源泉所得税がかかる場合がありますが、受領した請求書に計算ミスがあったりして、手戻りが発生しやすいところです。雛形を用意することで、必要に応じて使っていただくようにしたことで、やり取りが少なくなりました。
#データのアセット化
ワークフローの導入は目先の工数削減だけでなく、将来にわたってその効果を発揮します。何の支払いか見当もつかないクレジットカード決済の明細を見たことはないでしょうか。決済が切られているけど、何の支払いなのか、クレジットカードの明細だけで判別するのは至難の業です。ずっと同じ人間が経理業務を担当し続けていれば、問題にはならないかもしれませんが永遠にということはありません。異動は必ずおこります。そんなとき、ワークフローはデータのアセットになります。LayerXでは請求書に限らず、クレジットカード払いの場合でも、購買申請を上げてもらうルールにしました。この申請を見ることで、誰が何の目的でいつクレジットカード払いを依頼したかが後からでも検索性高く確認することができます、Slackやメール上での領収書・請求書のやり取りでは、フローで情報が流れてしまい、過去のやり取りの検索性が高くありません。将来の自分のため、将来の後任のため、情報を蓄積していきたいと思います。

パーキンソンの法則

ここまでワークフローの導入と、それに伴う業務の見直しについて書いてきました。最後に少し精神論チックになってしまいますが、以前参加したセミナーで知った法則にとても納得感があったのでご紹介します。
仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
これは、英国の歴史学者・政治学者シリル・ノースコート・パーキンソン(1909-1993)の著作『パーキンソンの法則:進歩の追求』の中で提唱された法則です。
裏を返せば、絶対●営業日で決算をしめる、と決めることが大事だという話です。根性論じゃないかと思うかもしれませんが、明確にデッドラインを決めると、やらないことが決まり、社内からの各情報収集のデッドラインも決めざるを得ません。
例えばLayerXでは、月次の決算であれば、3営業日時点で請求書が届いていない場合は、正確な費用計上は翌月とし、概算で費用計上するようにしています。通期の決算では話は別ですが、仮にもうすぐ届きますと言われていても、それ以上は基本は待ちません。そうすることで、余裕をもって前に進むことができます。
やらなくなったこともいくつかありますが、それは機会があれば書きたいと思います。

終わりに

LayerXでは経理プロダクトを提供しているというのもあるのですが、経理業務に対する理解、配慮がある仲間が多いです。Slackなどで、月初に経営管理部のチャンネルに依頼や質問などがある際には「月初にすいません」といった配慮ある枕言葉があることが多いですい、勤怠や経費の申請も協力的です。タイトルに書いたとおり、全員野球で月次決算に協力してくれているように感じます。この場を借りて感謝を伝えたいと思います。
とはえいえ、事業側の負担はなるべく、少なくやっていきたいですし、まだまだアナログな部分、改善できる部分は多く残っているので、引き続きコーポレートDXに取り組んで行きたいと思います。